寄生虫や花粉を攻撃!好酸球の役割

白血球の仲間、「好酸球」という名前を聞いたことがありますか?私たちの体は、常に病原体の侵入の危険にさらされています。そんな病原体から体を守ってくれているのが、私たちの体に備わっている「免疫」という仕組み。その免疫の主役は血液やリンパ液内の「白血球」です。ここでは、免疫について、白血球とは、そしてその中の好酸球について働きと関連する疾患について紹介します。

顆粒球の一種、好酸球とは?

免疫は大きく分けて「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられており、この2つの仕組みが協力し合って体を守っています。 自然免疫とは、病原体が侵入すると直ちに働く免疫機能。そして獲得免疫とは、自然免疫の防衛ラインが突破された時に働く仕組みのことです。
免疫機能の主役は「白血球」。白血球はいくつかの種類がありますが、その中で一番多いのは、自然免疫を担当する「顆粒球(かりゅうきゅう)」と呼ばれるものです。顆粒球は白血球の中でも寿命が短いという性質を持っている反面、白血球の半分以上を占めており、3つの種類があります。

好中球(こうちゅうきゅう)

免疫系の代表的な細胞。大きさは直径10マイクロメートルで、白血球の60〜70パーセントを占めています。体内に侵入した病原体や異物を見つけると、血管の外に出てそれらを“食い尽くして”死滅させます。

好酸球(こうさんきゅう)

大きさは直径9〜12マイクロメートル。好中球と同じように体内に侵入した病原体や異物を死滅させます。また、私たちの体が寄生虫に感染すると、顆粒から化学物質を放出して寄生虫を攻撃。アレルギー反応にも関わっている白血球です。

好塩基球(こうえんききゅう)

大きさは直径7〜9マイクロメートル。白血球の中で最も小さく、数も少ないものです。好塩基球の表面は、センサーの役割を持っています。体の外からアレルギー物質が侵入してこのセンサーに接触すると、化学物質を出してアナフィラキシーなどのアレルギー反応や炎症を起こします。

好酸球とはどんな細胞か

それでは、白血球の仲間である「好酸球」はどんな特徴を持ったものなのか細かく見ていきましょう。

好酸球が備える能力

好酸球の多くは、呼吸器や腸管、泌尿生殖器上皮などの組織に存在しており、下記の3つの能力を持っています。

遊走(ゆうそう)能力
異物に向かって進んでいく能力
貧食(どんしょく)能力
異物を細胞内に取り込む能力
殺菌能力
異物を取り込み、消化・殺菌・分解して死滅させる能力

好酸球は、花粉や寄生虫といった細菌よりも大きいものを処理します。そのようなものが体の中に入り込むと、好酸球の中に持っている「顆粒」から化学物質を出して、寄生虫やその卵、花粉などを処理していきます。

アレルギーと関連がある?

好酸球は、寄生虫や細菌から体を守ってくれている反面、アレルギーを誘発することもあると言われています。 気管支喘息を例に挙げると、炎症を起こしている部分に好酸球が集中し、集まった好酸球から多くの物質を分泌して攻撃を行いますが、その分泌物の働きによって周りの組織を傷つけてアレルギーを引き起こしやすい状況を作ってしまうことも。その結果、気管支喘息がより酷くなると言われています。

好酸球の基準値

通常、好酸球は白血球の2〜5パーセントを占めており、少し増えるくらいでは特に問題はありません。ただ、体内でアレルギー反応などが起こっていると値が大きく上昇することがあります。例えば、アトピー性皮膚炎も好酸球の値に影響しますが、症状がひどい場合には20パーセントを超えることも。正常値の3倍以上になると、「好酸球増加症」という名前がつきます。

白血球の異常値は幅広い疾患で起こりますが、感染症や組織崩壊による炎症が疑われる場合には、検査が必要になってきます。好酸球が増えた時に見られる具体的な疾患は、次の項目で確認しましょう。

好酸球が増えている!その原因は

好酸球が血液中に増える原因は、感染症や喘息などのアレルギー、悪性腫瘍など、さまざまなものがあります。中には原因不明なものもあり、症状の重さも自然と収まる場合から重症になってしまうものまであります。 では、実際にどんな疾患が関連しているのか具体的にご紹介します。

好酸球が関連している疾患

薬物アレルギー

好酸球増多の原因として、日本で最も多いのが薬物アレルギーです。疑わしい薬剤があれば使用を中止します。

気管支喘息

気管支が炎症を起こしている場合にも好酸球の増加が見られますが、この場合、好酸球が気管支の周辺に集まって気管支を攻撃してしまいます。好酸球は本来体を守ってくれる免疫細胞ですが、たくさん集まると炎症を起こす物質を出すという性質も持っているため、喘息の症状が悪化してしまうのです。

アレルギー性鼻炎

鼻汁好酸球検査を行うと、血液中や鼻水の中の好酸球増加が見られます。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎はアレルギー疾患のひとつ。皮膚のかゆみと血液中の好酸球量は比例するので、皮膚の症状が重くなると好酸球の値が高くなります。治療がうまくいっている時には好酸球の値が下がっていくので一つの目安にもなります。

副鼻腔炎(好酸球副鼻腔炎)

これまでの治療が効かない、新しい副鼻腔炎。抗菌薬の投与や手術を行っても繰り返す場合、手術時に採取した組織に好酸球が多く存在している場合があります。

寄生虫感染症

寄生虫感染症(アニサキス症や回虫症、フィラリアなど)が原因によって好酸球は増加します。開発途上国への渡航歴や生の肉を摂取したかどうかを確認します。中には有機農法野菜を生で食べることが原因となることもあると言われています。

その他の疾患

そのほかに好酸球が上昇する原因としてはリウマチ性疾患や血液疾患、悪性腫瘍に伴うもの、木村病などが挙げられます。

好酸球を減らすには?

好酸球を減らすためには、まずは症状を引き起こしていると思われる原因について検査を行い、治療を開始することが必要です。例えば、喘息やアトピーを例に、どのような治療をしていくのかを見てみましょう。

アトピー性皮膚炎の場合

炎症をいかに早く、確実に鎮めるかが重要となってきます。アトピー性皮膚炎に対して有用性・安全性が高いとされているのはステロイド外用薬、タクロリムス軟膏の2種類。炎症を抑えることで結果的に好酸球の値を下げることができます。 ただし、根本的にアレルゲン(ダニやホコリ、花粉、ペットの毛、ストレスなど)の除去も行うことが望ましいので、検査を行い、可能な限りアレルゲンを除去することも悪化防止につながります。

気管支喘息の場合

気管支喘息の治療においても、長期の管理薬として、吸入ステロイド薬が使用されます。気道の狭窄や炎症反応を抑えることで、好酸球の数値を下げることができます。 やはりこちらもアレルゲンの除去が必要になってきます。考えられるものはハウスダストやダニ。日ごろの掃除や洗濯により極力除去するのが望ましいです。

また、「免疫機能のバランスを保つ」ことを心がけることも大切。喘息などのアレルギー疾患を持つ人は、腸内環境が乱れている人も少なくないと言われています。 免疫機能をアップさせるためにも、「人体最大の免疫器官」と言われる腸の調子を整えるよう心がけましょう。調子が悪いと消化が完全にされていない状態で食べたものが吸収され、異物と判断されて免疫機能が異常に働いてしまうことも。ですから、腸内環境を良くするための食べ物を摂取することが大切です。

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