原因不明の血管炎のひとつとされる難病、「ウェゲナー肉芽腫症(にくがしょう)」。その症状や免疫との関係性などをまとめました。
ウェゲナー肉芽腫症は、発熱、全身の倦怠感、食欲不振など全身症状や、鼻、目、喉、肺、腎臓の炎症が同時に、または連続して起こる病気です。
1939年に世界で初めて報告されました。
原因は明らかになっていませんが、免疫の異常による病気だという説が濃厚です。
日本国内の難病申請者数は1,500名ほどで、男女比は1:1です。
男性は30~60歳代、女性は50~60歳代を中心に発症者が報告されています。
ヨーロッパの白色人種に多い病気と言われていますが、日本国内では地域差などは見られません。
環境に依存して発症するという証拠も見つかってはいないようです。
原因は明確ではありませんが、この病気を患っている人の多くが、血液中に「抗好中球細胞脂抗体」という自己抗体を持っていることがわかっています。
また、上気道の細菌感染によって、この病気が発病したり、再発したりすることも多いので注意が必要です。
欧米では、HLA抗原という特定の遺伝子をもつ人に発症しやすいという報告がありますが、日本ではHLA抗原との関連性は確認されていません。
ただし、この病気に限らず自分の体を攻撃してしまう免疫異常による病気は、親族に同じような病気が多く見られる傾向にあります。
発熱、食欲不振、倦怠感、体重減少などの全身症状のほか、鼻出血、耳漏、耳痛、視力低下、眼充血などの上気道の症状、血痰、呼吸困難などの肺症状、血尿、浮腫、乏尿などの腎症状、その他、血管炎による症状など、多岐に渡ります。
すべての症状が生じる場合は全身型ウェゲナー肉芽腫と呼びます。
早期診断・治療によって寛解(一時的に病状が軽くなる状態)へ導くことが可能です。
治療には、免疫抑制剤、副腎皮質ステロイド剤などの免疫抑制療法が行なわれます。
この病気は、いかに早期に発見するかが重要です。
病型別に免疫抑制療法を行なうことで、寛解するケースも珍しくありません。
しかし、早く治療を中止すると病気が再発する恐れもあるため、長期にわたっての経過観察が必要です。
病気が再発する可能性を見る判断材料としては、血液中の「抗好中球細胞脂抗体」のANCA値の推移を参考にします。
進行した場合は免疫抑制療法による治療が難しく、腎不全になり人工透析を余儀なくされたり、慢性呼吸不全に陥ったりする重症例もあります。
重症化を防ぐためには、薬による治療とともに基礎的な免疫力を高める努力も必要です。
毎日、バランスの良い食事を心掛け、自分自身が本来持つ免疫力を強化していきましょう。