多くの人がかかり、亡くなるケースも多い「がん」。 2012年の国内におけるがんの罹患数は86万5千件にも上り、そのうち亡くなった方は36万人もいました。
日本だけでも毎年何十万人もの命を奪うがんですが、その原因として頻繁に取り上げられるのが、食生活の欧米化です。脂質少なめで栄養バランスの整った食事が、がん進行や再発予防に効果的な手段の1つであることは、みなさんご存知のことと思います。
「なるべくがんにかからないようにしたい」 「かかってしまったけれど、進行を抑える方法はないの?」 「手術したけれど、再発するかもしれない」
こういった悩みに対しての解決策には、どのようなものがあるのでしょうか?
方法はいくつかありますが、中でも免疫力を上げることは特に効果的な解決策として挙げることができます。
がんを発症する流れは次の通りです。
免疫力がしっかり機能していれば上記の2段階目の時点で、がん細胞が腫瘍になる前に破壊される可能性が上がります。
では、免疫システムはどのようにして機能しているのでしょうか?
そもそも人間には、2つの免疫システムがあります。 体内に常駐し、侵入してきたウィルスなどに迅速に対処する「自然免疫」と、自然免疫では対処しきれない場合に出動する、より強力な「獲得免疫」です。
外部からウィルスなどが侵入すると、自然免疫である「単球」や「顆粒球」、「NK細胞」がこれに反応し、攻撃を始めることになります。単球のうち「マクロファージ」と呼ばれるものが、侵入者が何者なのかを判断し、顆粒球やNK細胞にその情報を知らせます。
その後、マクロファージを含む自然免疫によって侵入者への総攻撃となります。
これらの自然免疫で対処しきれない場合は、同じくマクロファージが侵入者の情報を知らせ、獲得免疫の出動となります。獲得免疫には「リンパ球」があり、リンパ球には「B細胞」や「T細胞」があります。
厳密にはNK細胞もリンパ球の一種ですが、B細胞やT細胞よりも攻撃力が低い代わりに、他の細胞の指令無しでも自由に動くことができる特徴があります。
T細胞にはさらに様々な種類があり、特に重要なものは以下の3つです。
他の細胞に攻撃指令を出す役割があります。
ウィルスに感染した細胞やがん化した細胞を攻撃します。
サプレッサーは抑制の意味で、攻撃を止める働きをします。上記のうち、ヘルパーT細胞は状況に合わせてさらに「Th1細胞」「Th2細胞」のいずれかに変化します。
細菌やウィルスの侵入を感知してB細胞やキラーT細胞、NK細胞に指令を出します。
花粉やハウスダストなどのアレルゲンを感知して指令を出します。
これらの免疫機能が連携しあうことで、私たちの身体は外敵から守られているのです。
細菌やウィルスに反応するTh1細胞とアレルゲンに反応するTh2細胞は、お互いに情報を共有するためにサイトカインという物質を分泌します。
Th1細胞とTh2細胞の出すサイトカインは別物で、これらが互いの働きを抑制しあうことで免疫のバランスを保っています。逆に言うと、アレルギー反応を起こしている状態というのは、このTh1細胞とTh2細胞のバランスが崩れている時ということです。
ではなぜアレルギーに悩む人が多いのかというと、そもそも人間はTh2細胞の方が優位に働きやすいからです。Th1細胞は多くの細菌やウィルスと出会うことで成長し、次第にTh2細胞とのバランスが良くなっていきます。
つまりアレルギー体質の人は、子どもの頃の細菌やウィルスとの出会いが少なかった人たちとも言えるのです。
免疫力低下の理由として主に考えられるものは、ストレスや生活習慣の乱れなどがありますが、他にはどのような原因があるのでしょうか?
がんの症状や進行状態などによりますが、がんの治療に抗がん剤が使われる場合があります。抗がん剤の副作用として、強い吐き気や嘔吐、脱毛などが挙げられますが、これらの他、免疫力の低下にも影響を及ぼします。
抗がん剤にはがん細胞の増殖を抑制する効果がありますが、この効果はがん細胞だけでなく正常な細胞にも作用してしまうのです。赤血球・白血球・血小板などを作り出す機能をもつ造血細胞が破壊されてしまうことが、抗がん剤による免疫力低下の原因と言われています。
近年になって、がん患者の体内では免疫細胞の機能を抑制させる「免疫抑制細胞」が異常増加することがわかってきました。がんが進行するにつれて免疫抑制細胞の数も増え、治療を妨害するのです。
また、免疫抑制細胞が多い患者ほど、予後があまりよくなかったというデータもあります。本来であれば免疫細胞の暴走を防ぐ役割を持つ免疫抑制細胞ですが、がんを発症するとその効果は一気にマイナスへ転じてしまうというわけです。これを受け、免疫抑制を解除する作用をもつ医薬品の開発が進められ、一部の薬剤が承認されることになりました。
とは言え、まだまだ研究は途中段階であり、承認された医薬品も高額であるため、残念ながら一般のがん患者全てがその研究の恩恵に預かれるというわけではありません。
わかりやすく具体例を挙げてみましょう。
最近父親が大腸がんを発症した方がいたとします。手術は成功し退院できたものの、転移や再発のリスクがあると医師に言われました。転移や再発の防止を考えるのならば、抗がん剤使用は仕方がないとわかってはいても、免疫力を更に低下させる危険性がある点はやはり不安です。
そんな時、がんは免疫力が高いと治るという話を耳にして、独自に情報を集めてみることにしました。詳しく調べてみると、免疫力の向上によってがんの再発や転移の防止に効果が期待できること、ストレスとの関連性がよく取り上げられていることがわかりました。
そこで思い出したのが、昔大腸がんを発症した伯父のことでした。検査のことから治療のこと、手術後に人工肛門を使用することになったことなど、詳細を伯父から聞いている父親は相当な不安やストレスを感じているに違いありません。たとえ数十年前のことでも、身近な肉親の体験談を聞いていたとしたら、かなり不安を感じることでしょう。
こういったストレスによって父親の免疫力が低下しているのだとしたら、抗がん剤ではさらに免疫力を低下させる心配もありますから、なんとかして少しでも免疫力を回復させてあげたいと考えたのです。
では、免疫力を活性化させるにはどのような方法が効果的なのでしょうか?
免疫力アップに効果的だと言われている食材を取り入れて、バランスの良い食事を心掛ける、というものです。抗酸化力が高く、リンパ球の働きを活性化させるという、「ファイトケミカル」を含む食材を食べると良いとされています。
ファイトケミカルと、それらを効率的に摂取できる食べ物には以下のものがあります。
また、免疫に特に大切な白血球はタンパク質から作られるため、魚介の中でもアジ、サバなどの青魚が良いとされています。
その際は加熱しすぎると酸化しやすいので、お刺身や酢の物で摂ると良いでしょう。肉類もタンパク質は豊富ですが、脂質を多く含んでいるため、なるべく脂身の少ない部分を野菜と組み合わせて食べるようにしましょう。
最近流行りのオメガ3系の、亜麻仁油やえごま油をドレッシングに使うと、脂肪酸のバランスも良くなります。
逆に控えた方が良いものは、コーン油、サラダ油などのオメガ6系とされる油を使ったもので、トランス脂肪酸を多く含むスナック菓子なども同様です。白米や白砂糖も多量摂取は控え、代わりに玄米や黒砂糖などを使うと良いでしょう。
また、夜遅くに甘いものを食べるとがん細胞の栄養になってしまうため注意が必要です。開腹手術をした人は食物繊維の取りすぎにも要注意です。身体に良いのは確かなのですが、多く取るとまだ回復しきっていない消化器官に負担がかかってしまいます。
1にあるように、様々な食品をバランス良く摂ることも大切ですが、食事は毎日のことですから、毎回気を使っていては、それこそストレスの原因にもなりかねません。
ユーグレナはミドリムシの別称で、名前にムシと付いていますが、実際は「虫」ではなく動く「藻」です。 野菜や魚に含まれる栄養素を豊富に含んでいて、これひとつで必要とされる栄養素をほぼ全てカバーしてくれるスーパーフードです。DHAやEPAなどの抗酸化作用のある成分もあるので、がん予防やがん治療の助けになるのでは、と期待されています。
ユーグレナの他、きのこ類などにも含まれているβグルカン(パラミロン)は、免疫力を高める作用があると言われています。実際に、60代の男女10名に対して2ヶ月の間パラミロンを1日1.0gずつ投与したところ、NK細胞の増殖促進や攻撃力を高める効果が見られたという実験結果もあります。
また、2013年には学会誌「Food&Function」でユーグレナの大腸がん抑制効果についての発表がありました。化学発がん性物質を投与することで大腸がんを誘発させたマウスを使い、ユーグレナ、パラミロン、アモルファスパラミロン(パラミロン非結晶体)などの摂取による大腸がんの抑制効果についての実験が行われています
化学発がん性物質であるDMH(1,2-Dimethylhydrazine)投与による大腸がん誘発マウスを用いて、ユーグレナ、パラミロン、及びパラミロンの非結晶体であるアモルファスパラミロンの摂取による大腸がんの抑制効果について検討を行いました。その結果、DMHの投与により大腸がんの発生過程で見られる前がん病変(ACF:Aberrant Crypt Foci)の発症が、ユーグレナ摂取により32%、パラミロン摂取により59%、アモルファスパラミロン摂取により73%抑制されていることが明らかになりました。すなわち、ユーグレナにACF発生抑制効果が認められ、特にパラミロン及びアモルファスパラミロンがACF発生抑制に関与していることが示唆されました。引用元:http://www.euglena.jp/news/n20131030/
また、がん細胞を使った実験においては、ユーグレナ抽出物によってがん細胞(肺・乳)が細胞死を起こし、がん細胞の増殖をコントロールするという細胞シグナルの阻害をしていたことがわかりました。
このようなことから、ユーグレナには、がん増殖や転移を抑制する可能性も期待されています。まだ研究中の段階ですが、ユーグレナが光に向かって進む習性を利用することで、がんを発見、除去できる可能性もあるようです。
いずれにしても、免疫力の活性化ががんの再発予防のカギを握っているのは間違いないと言って差し支えないでしょう。当然、医薬品ほど効果が大きいわけではありませんが、だからこそ身体に負担をかけずに免疫力を活性化させることが期待できます。
まだまだ研究が続けられているユーグレナですが、がん患者の方に限らず、基礎免疫力を向上させたい方にとっても試してみる価値は大いにあると言えますね。