免疫力をアップさせる体温の上げ方、および体温と免疫力との関係についてまとめました。
「体温を高めると免疫力がアップする」ことは、医学的にもほぼ常識とされています。その理由は後述するとして、ここではまず、体温を上げる方法について見ていきましょう。
テレビや雑誌、書籍でも知られ、体温と免疫の関係を研究している、イシハラクリニックの院長、石原 結實博士。石原博士は、体温が下がると免疫力が下がり、様々な病気の原因になることを指摘しています。さらに、最近の日本人は、昔に比べて低体温であることに警鐘を鳴らしています。
以下、石原博士の提唱する学説を簡単に紹介します。
人は、体温が1℃下がれば、免疫力が37%下がります。一方、体温が1℃上がれば、免疫力が5倍になります。風邪を引くと熱が出ますが、これは体温を上げることで免疫力をアップさせ、ウイルスを撃退しようとする、自律神経の働きによるものです。
また、ガン細胞は35℃台でもっともよく繁殖し、39.3℃になると死滅します。このように、ガン細胞は熱に弱い傾向があります。近年、ガン患者が増えている要因のひとつとして、全体的に体温が低下しているからではないか、と考えられています。
以前は、成人の平均体温が36.5~36.8℃でした。それが現代では、体温が高い人でも36.2~36.3℃。なかには、35℃台の体温の人も増えているようです。
現代人の低体温化の原因は、主に3つ考えられます。1つ目が体を動かす機会が減ったこと、2つ目が過度な減塩、3つ目が冷たい飲み物の過剰摂取によるものです。
自然科学機構・生理学研究所の加塩 麻紀子研究員・富永 真琴教授らの研究グループは、「体温と免疫の関係」について重大な発見をしました。その具体的な内容は、米国科学アカデミー紀要の電子版に掲載されていますが、ここでは、その発見を概略的に紹介します。
細菌や異物が体内に入ってくると、「マクロファージ」と呼ばれる免疫細胞が現れ、これら細菌を食べてしまいます。
マクロファージは、細菌を食べる際に過酸化水素を発生させます。これにより、体内の温度センサー「TRPM2(トリップ・エムツー)」という組織が急に機能し、その結果、マクロファージをより一層強くして免疫力を高めます。
TRPM2は、本来、48℃くらいの温度を感知したときに働く組織ですが、加塩研究員・富永教授らは、「TRPM2が過酸化水素の影響を受けると、約38.5℃でマクロファージが増強する」ことを発見しました。
免疫細胞「マクロファージ」は、過酸化水素の影響を受けたTRPM2の働きによって増強されます。現在は、このメカニズムを応用した新薬や治療法の開発が期待されています。
※自然科学機構生理学研究所の加塩麻紀子研究員・富永真琴教授らの研究を参照させていただきました。
URL:http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2012/04/-trpm2.html